日は沈んでも朝日の昇るときは来る 12
(142)修学旅行は世界観を一変させた
「さあ、私達学級委員長と副委員長よ。
宮城仙台青葉城、芭蕉の松島瑞巌寺、絵葉書でしか見たことないわ。
今年は特別にオプション、福島の常磐ハワイは海の見えない陸のハワイだそうよ」
(143)修学旅行の準備はやることがいっ ぱいあるのよ
「春の修学旅行はやることいっぱいあるのよ。
先生達が決めた部屋割にはみんな不満よ、仲良しと分かれるなんてイヤだー、意地悪だーと叫ぶ子もいるのよ。
女の子は部屋割りを見て非難轟々よ。
女の怨みに火を付けると大やけどするかもね。
大人は乙女心を理解しない、卑しい家康型狸です」
「そういう旅行のガイドや行程時間は丸山先生がガリバンで書いてくれたのよ、謄写機で印刷しなければ、それから大切なことがもう一つあるわよ。
そのお手伝いを代表の私達二人でやるのよ」
(144)歌本を作る
「笹冬君これ見て、歌集に載せる歌のアンケートよ。
私達の小学校の校歌が先頭よ、そして荒城の月、お正月、春が来た、春の小川、早春賦、どこかで春が、朧月夜、夏は来ぬ、我は海の子、旅愁、虫の声、紅葉、雪、冬景色」
(145)第一歌集
「同第一歌集は本当に歌集のタイトルのように私達の故郷、笹髙原と私達の心を描写したような死羽前そのものです」
「汽車、故郷、浜辺の歌、靴が鳴る、浜千鳥、叱られて、シャボン玉、どんぐりころころ、赤とんぼ、赤い靴、風、夕日、揺り籠の歌、月の砂漠、夕焼け小焼け」
「さあ黙っていないでページを揃えて発キスで綴じるのよ」
「あの町この町、からたちの花、この道、大きな栗の木の下で、チューリップ、うれしいひな祭り、さくらさくら、こいのぼり、牧場の朝」
(146)第二歌集
「次は第二歌集よ、椰子の実なんか好いわねー、早く実物を見てガブリと食いつきたいわ」、
「犬のおまわりさんが困っちまうかも、アハハー」
「椰子の実、うみ、里の秋、たきび、スキー、めだかの学校、夏の思い出、ちいさい秋みつけた、冬の星座,いぬのおまわりさん』
「とんぼのめがね、ドレミの歌、ぞうさん、かあさんの歌、大きな古時計、手のひらを太陽に、港、こうよ」
(147)外国編1
これは日本編です、他に外国の曲も歌集の候補です。
「ケンタッキーの我が家、か、いいわねー」
「故郷の廃屋、夢路より、故郷の人々、ケンタッキーの我が家、金髪のジョニー、オールドブラックジョー」
「同この外国編は、私の従姉妹の姉が久し振りに都会から帰って来て笹髙原で同窓会をやったそうよ。
この時故郷の人々を男性の一人が歌ったそうです」
「それをじっと聞き入っていた男性陣の全員がボロボロ涙を流してしまったそうです」
「何故泣いたのか、その理由は今の僕に羽分からない、そこで老いた父母の姿を見たからだなんて」
「おおスザンナ、遠き山に日は落ちて、峠の我が家、雪山賛歌」
「アルプス一万尺、思い出のグリーングラス、ドナドナ、花はどこへ行った、アロハオエ、花まつり、久しき昔)
(148)日本歌謡曲編1
「どう、どれも捨てがたいでしょう」
「 まだあるんですか」
「日本歌謡曲編、いつでも夢を、霧氷、下町の太陽、バラが咲いた、高校三年生、高原のお嬢さん、学園広場、こんな物載せていいんですか」
「あのね、私の従姉妹の兄が東京での同窓会で、ある女性が〃学園広場〃を歌ったんだそうです。
すると一人の同窓会の男性がすっと立ち上がってボロボロ涙を流して言ったそうです。
アア、僕のガールフレンドの君は中学の時髪はフサフサ春風になびかせる豊かな緑だった。
これを忘れて死ねようか。
するとすぐそばの男性は女性の髪は黒い色と決まってると思うんだけど、どうも分からん、と言った。
そうか、君に島崎藤村の心を教えよう、緑こそ大地を再生し命を産む源泉なのだ。
緑の大地の生命の多いこと、緑の大地が地球を被っているんだ、と透明な色の水も女神に準じる存在なんだよ。
そうでなければ生命の星はなかった。
命の人、だから憧れの女性の緑の黒髪忘れがたし。
そう言い終わると男性尾人全員は、大理石のローマ神殿が腐り果ててボロボロ崩れるように泣いた。
ならば僕も一言言いたい、そう立ち上がったのは石田左吉こと、後の三成だった。
パンチの効いた歌唱で一世を風靡した人に黛ジュンがいる。
しかしアイドルからそして第一線の歌手から転落するとパンチの効いたボデーを使いヌード女優に転身した。
関ヶ原の小早川秀秋の裏切りにも嘆いたが、これにはショックだった。
あのハ短調〃夕月〃の琴の調べのように永遠に清楚でいて欲しかったがここに来たらやむなしお互いに若い精気は年を取り無くなりつつある、美しい肢体には二度と後戻り出来ないから。
何しようが非難できない、アア俺は彼女の胸で窒息して死にたかった、警察の検死に於いてこの上なく幸福に没した男と証書に記述されたい。
私は大きなクリの木の下で彼女と出会った。
大きなクリの毬のようだった。
私は青江三奈の色香に負けて結婚式を池袋の夜に挙げた。
(149)再生可能な食べ物の宝庫
女性陣は、なんか段々大変な話が飛び出しています。もう少し故郷の良さを思い出しましょうと言う。
私達の山里ではクマにあっても襲おうとしな
キツネに会っても騙そうとしないんです。
先日みんなで茸狩りに行ったときもちかくにどくきのこが生えているのに気がつかず近づくといナメコや椎茸、舞茸も危険です、近づかないで下さいと言ってくれたんです。
食べられる物は私達の菌類です、何回も再生しているんです。
あなた方の採取の時間はせいぜい五〇,一〇〇年、それは三億年の一秒です。
(150)エッ、校長の許可もでたって
「エエッ、校長の許可もでたって。
修学旅行時のみの特別許可なんてとても信じられないがうれしいなー」
(151)今は男の汗臭い歌が多い
「そうよ、今の時代は男の汗の臭いがムンムンする歌が多いのよ。
裕次郎、佐竹、浩二、三橋美智也、春日八郎、三波春夫、フランク永井、水原弘、守屋浩、村田英雄」
(151)将棋のコマに命をかけるなんて、 随分軽いセリフね
「田畑義男などそうよ。
小林旭の流離もの、鶴田浩二の任侠ものヤクザ者、こういうのは女の子は大嫌いよ。
(152)夢もロマンもない世の中はだめよ
夢もロマンもないでしょ。
ヤクザのお嫁さんなんていやよ。
だから教育の場で軽蔑されるのよ、これらは永久追放だあー」 、
(153)異次元の外国映画曲
「 それに比べ外国の映画音楽なんか、まるで夢の世界よ、知ってる、聞いたことある、笹冬君」
「一つも見たことないのね、知らないのも自然の道理よね、何せ笹高村は自然の宝庫だから、オホホーっと」
(154)外国映画と曲は月面旅行よりすご いのよ
「 外国の映画なんか月に旅行に行ったような物よ、月は砂漠でも水がなくても散歩できる」
「それは、太陽がいっぱい、ジョニー・ギター、禁じられた遊び、ブーベの恋人、白い恋人達、ある愛の詩、夜霧のしのび逢い、鉄道員、追憶、雪が降る、愛の賛歌、恋は水色、砂に消えた涙,夢見るシャンソン人形、悲しき天使、などです」
(154)桜子は何処で映画を見たのだろう
はていつ何処で桜子はこんな外国の音楽を聴いたり映画を見たんだろう。
笹冬の学校の休みには毎日山菜取りしかしていない。
自分の知らない世界を沢山知っている彼女が急に大人びて見えた。
(155)笹冬くん、これ見て
「笹冬くん、これ見て」
ニコニコして手渡しをしてくれたのは宿泊先の旅館でのお楽しみ会の予定表だった。
何これとこれを見て目を疑った。
〃いつでも夢を〃のデュエット、笹冬・桜子と大きく書いていた。
(156)人前で歌等歌ったことがない
人前で歌など歌った試しがないのに、しかも桜子と並んでみんなの前に立つ、想像しただけで汗が出てくる、恥ずかしくなった。
笹冬が当惑した表情でこのプログラムをじっと見ていた。
(157)大きな栗の木の下でお二人練習し ましょう
「なにどうしたのそんなに困った顔して、人前に立つのは学級委員長として慣れているでしょう。
これは余興よ、遊びなんだから。
放課後は校舎の裏のあの大きな栗の木の下で大きな声でお二人練習しましょうね」
「私は男性の所も歌うから、笹冬君は女性が一人歌うところだけ気をつけて私をじっと見つめていてくれればいいのよ。
男性の所は二人で歌うのよ,簡単でしょ。
お楽しみ会だから失敗も緊張なんてないわ」
(158)桜子をじっと無言で見つめるなん て
こう言っていつも励ましてくれるのだった
が、桜子をじっと見つめる、それも歌が終わるまで。
その時間は相当長く感じるに違いないと思った。
(159)夜会のオプションはフラダンス
「桜子さん、フラダンスも女性はやるんですか)
「そうですよ、本物は常磐ハワイのプールで水着を着て見物です。
旅館では有志の女の子十人一組で三組が踊りを手作り衣装で発表します。
期待しいていてね」
(160)フラダンスの衣装
「私達のハイビスカス組は薄いピンクのブラウスに紺と綠の花柄模様のパウロロングスカートに決めました」
(161)フラダンスは男の子をドッキリさ せる
「ええっ、聞いたことない、ややこしいですって。
服装にも無頓着様ね笹から生まれた笹太郎殿、この踊りを見たら早く結婚したいと思うでしょう。
寝室に忍び込んで僕と結婚して下さい、なんて言わないでね「
「あそこは南国のハワイそのものよ。
ハワイはカメハメハ大王のふるさと。
その晩にみんな女の子は王様のお嫁さんになった夢を見るのよ。
そういう訳で旅館の寝室は一般男子と普通の男の子の出入りは禁制なんですー、よ、おほほー」
(162)快活な桜子
快活で明るい笑桜子はとても仲良しのお友達です。
それからとうとう修学旅行の出発日の朝を迎えた。
二人ともバスに荷物を積み込む準備にに大忙しです。
(163)修学旅行のバスが来た
歌本やバスの中での飲み物サイダ等ー、お菓子を入れた。
もしはぐれて迷子になった時の集合場所など、場所と道の尋ね方、困ったときはどうするか集、本も積んだ。
みんな忘れられない大事な物で旅行は準備が大変だと言うことがよく分かった。